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NOTHING IS EVERYTHING

平成28年1月、家族3人で明日香村に移住。自然に囲まれ自由に楽しく、人間活動中。

狩猟デビュー。

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前日に師匠から「明日行くぞ」とメールが。十二月四日、ついにデビューとなりました。

 

 

当日、夜明け前に出発。明日香村から桜井市、大宇陀市と抜けて曽爾方面へ。猟場に着く前、大宇陀の民家のすぐそばや道路脇で二、三頭の鹿を発見。今日は獲れそうやなぁ、と師匠。ほぉ~と思いながらも、そういえば鹿なんて奈良公園で見る以外ほぼ見た事ないし、ましてや野生の鹿なんて初めて見た自分は、ほのかな期待と緊張が入り混じった、なんとも独特な心境になっていた。

 

さぁぼちぼち着くぞ~、と師匠。猟場に着く頃には日も出かかっていて、ちょうど発砲できる時間となった。

 

狙うは鹿か猪。山の大自然の中でいよいよ猟が始まる。

 

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二人で気配を消しながら、静かに、ゆっくりと進んで獲物を探しつつ、森に溶け込んでいく。

 

二、三十分経った頃、こちらも森に溶け込んでいる鹿を発見。木なのか何なのか、相当見えにくかったが、よーく見ると二頭のメス鹿がこちらをジッと見つめていた。

 

「師匠、アレ・・・。」

 

「お。おるな・・・。」

 

小声でやりとりする。

 

距離にして約三十メートルほど。私達が立つ場所より少し高い位置に鹿はいた。

 

師匠がゆっくりとライフルを構え、精神統一していく。森の中は静かすぎる程静かで、シーンとしていて、まさに無音。

 

私は見逃さない様に全てを凝視していたが、いつ撃たれるかも知れない鹿を見ていると心のどこかで、あぁやめてくれ!と叫ぶ自分がいた。

 

それからとてつもなく長い、数秒が経った。

 

先に動いたのは鹿。

 

殺気を感じ取られたのか、二頭同時にパッと走りだす。その瞬間ー

 

 

パァァ――――――――ン

 

 

初めて聞いたライフルの乾いた発砲音に、私はまさに耳がキーンとなり、数秒間何も聞こえなくなった。

 

ハッと鹿の方を見ると、二頭はまだ走って山を登っている。

 

「あ、当たりました!?」

 

「いや・・・外した。」

 

やがて鹿は見えなくなり、一気に緊張が解けた。

 

こんな緊張感は今まで体験した事が無く、残念な気持ちと一緒に、狩りに来ているのにどこかでほっとした所もあり、しばらく呆然としていた。

 

次、行こか、と違う谷へ場所を変える。

 

奈良県の山には細い林道から入ると谷がたくさん有り、少し進むとすぐにまた、深い山の中へ入っていく。

 

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次に獲物に遭遇したのは、二つ目の谷に入り一時間程度経った頃で、五頭のメス鹿が50m程先をゆっくり歩いていた。

 

が、すぐに気づかれて群れで走り出す。

 

追いかけるが師匠、鹿にまかれる。

 

しばらく後を追うも鹿はかなり速く、すぐに全く見えなくなった。

 

スタートから三時間。ここで少し休憩する事に。

 

猟の事や銃の事なんかを色々と教えてもらいながら、持ってきたおにぎりで腹ごしらえ。食べ終わると、次行くか~とまた違う谷へ移動する事に。

 

次の谷へ林道から車で入って行く時、車内で一人考えていた。

 

弾が外れた事にホっとしたり、撃たれそうな鹿を見てやめてくれと思ったり、自分が望んで師匠にわざわざ連れてきてもらっているのに、こんな中途半端な気持ちでは獲れるものも獲れない。アレルギー持ちの家族にジビエを食べさせる為、肉の自給自足をする為に準備をして来て、今日はまだその第一歩。ここでビビってどうする。というか、そもそも俺が撃ち殺すんじゃないんやからせめて、獲りたい気持ちは100%で行け馬鹿野郎!と自分に喝を入れ、気持ちを入れ替えた。

 

 

その直後、思わぬ形でその時は来る。

 

 

林道入口から1Km程入った所で、師匠が急にあ、と言って急停車。車を出て進行方向から三時の方向へライフルを構えた。

 

「え?なんすか?獲物いました?」

 

「・・・。」

 

師匠反応せず。

 

ライフルを構えた先を見るも、車内からはよく見えない。しかし、ハッキリと分かるぐらいに師匠が背中から放つ殺気を感じ、あ、これ耳を塞がないと・・・と思うと同時に、

 

パァァ――――――――ン

 

そして耳キーン。

 

何故か一発目よりは多少マシだったので、すぐに撃った先に眼をやる。

 

 

バターンと倒れていく、オス鹿が見えた。

 

 

「やりました!?」

 

「倒したよー」

 

うおお。まじか。

 

ついにこの時が来たのか・・・。

 

と、急いで車を降り、モーラ2000を腰のベルトに装着、肉を入れる袋を持って現場へ。

 

車から10mほど斜面を登った所で、三歳ぐらいの、小さいけど立派に角の生えたオス鹿が倒れていた。弾は首に命中し貫通していたが瀕死で、まだ息はあった。

 

すぐに師匠がナイフで止め刺し。

 

間もなく、息を引き取った。

 

すごく、すごく永く感じた。私は鹿が息を引き取るまでの間、苦しませてごめんな。許してくれな。と手を合わせていた。止め刺しだけは自分で何度やろうとも、慣れたくはないと思う。

 

そしてその場で教えてもらいながら解体し、持ち帰る分の肉を袋に入れ、全ての作業が終わるともう一度、二人で手を合わせた。

 

「ごめんなさい。ありがとう。頂きます。」

 

何度も心の中で唱えてその場を後に。

 

ちょうど昼頃で、そこからも谷をいくつか変えしばらく探すものの、朝夕に出てくる事の多い獣類は、その後は一頭も見なかった。

 

これにて私の狩猟デビューの一日は終わり、山を下りた。

 

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この日の事は、生涯忘れないだろうと思う。

 

一日を通しての色々な気持ちの変化。

 

目の当たりにした大型獣の「死」。

 

解体する獣の体温。

 

モーラ2000の切れ味。

 

忘れないだろうと思う。

 

自分で直接殺してはいないものの、この日体験した事は、肉を食べるのならこれが人間本来の姿であり、とても自然な事の様に感じた。まさに自分が目標としている人間活動。そう言った意味では感動する事も出来た。

 

大げさでは無く人生観も変わった様に思う。病気になりえる様な生活習慣は正し、車の運転、仕事中の事故にもより一層気を付けなくてはいけない。自分自身の怠慢で死ぬ事になれば、今日殺したオス鹿に申し訳ないから。

 

 

家に帰り、外して来た枝肉を小分けにして保存。この日から少しずつ食べている。

 

三日間熟成させた鹿肉はとても柔らかく格別の味で、嫁殿も今まで食べた肉類の中で一番好きだと言ってくれた。脂肪がほとんど無く、栄養豊富な100%自然の肉は身体を元気にしてくれる様で、この鹿肉を食べた夜はぐっすりと眠れる。部位別の調理の仕方や熟成方法も奥が深く、自分たちに一番合うやり方をこれから色々と試してみるつもり。

 

師匠にお世話になったこのデビューで、狩猟をして肉を得る、と言う事が私のこの先の人生にとって、とても重要な事になると判断できたので、本格的に動いていく事に決めた。

 

許可・免許類を取り来期、遅くてもその次の猟期には全て自分一人で出来る様になろうと思う。

 

次の出猟予定は年末28日。食べたいと言ってくれたお義父さんに、三〜四日間熟成後の背ロースを正月に持って行って是非食べて貰おう。美味しいらしい、若いメス鹿が獲れるといいなぁ。